君色
「こっからだったら北斗の家の方が近いね、そこまで走ろう」

「あぁ……」



俺たちは、5分足らずの道のりを、雨に打たれながら全力疾走した。



これは…ただの偶然か?

悪い冗談ならやめてくれよ…。


嫌でも…封じこめたはずの記憶が俺の中に蘇り、体中を熱で覆った。




「はぁーーー…あんなちょっとの距離だったのに全身ずぶぬれ。タオル貸して?」


俺は無言で、白い大きめのタオルを樹里に手渡す。


彼女は自分の身体を大雑把に拭うと、



「こっちきて」



と俺を手招き、バサバサと音を立てながら無造作に俺の頭をそれで拭った。



そこから覗く、水濡れの胸元は、やっぱりどこか、妖しい色気をかもし出している。

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