君色
「まど…か…っ」



あたしの上で切ない顔した、彼の瞳の中には

あたしではない、別の誰かが映っていた。




「まどか……っ……」


うわごとのように何度も何度も、

彼に名前を呼んでもらえるその人が、どうしようもなく羨ましかった。



ねぇ、その手も、その唇も、あなた自身も、今、あたしの身体に触れてるんだよ。




そんな、簡単な事にも気づかないで



あなたは何度もあたしを抱くんだね…








消えない傷を分け合おう―――。

叶わない想いを胸に秘めたまま


どんなに辛くても苦しくても忘れられない痛みを背負えば

少しはあなたの気持ちがわかる気がしたんだ―――…。


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