君色
「ねぇ、二人でここを抜け出しちゃおっか」

「え……」


返事をし終わる前に、純平君はあたしの手を引いて夜の繁華街を突っ走った。



「ね、ねぇっ!何処いくの!?」

「えーーー??」


夜も眠らない繁華街で走りながら会話するのは難しい。

大通りの車の音や、行き交う人の雑踏であたしの声はかき消された。



…っていうか!!

気持ち悪いんですけどっ!!



足が速い純平君のペースについていけるはずもなく、ほぼ引きずられる形でここまできたけど、だんだんと視界のゆれが激しくなり、意識を繋いでいるのがやっとだった。



もっ…もうだめっ…!!



許容範囲を超えてしまったあたしの身体は、抜け殻のようにふにゃふにゃとその場に倒れこむ。




「じゅ…樹里ちゃんっ!?大丈夫っ!?」


純平君が突然意識を失ったあたしの体を抱え込みながら、焦って現実の世界に引き戻そうとするも

残念ながら叶いそうにない。



純平君…きっと呆れてる。

(半分くらいは彼のせいでもある気がするけど)

初対面でこんな迷惑かけちゃったら、いくら優しくても普通引いちゃうよね…。

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