君色
「なななな何やってんのっっ!!??」

「あ…ごめん。なんか樹里ちゃん凄い甘い匂いがしたから…」



はぁっ!!?

甘い匂いがすれば人の耳の中舐め回すんか!?乳揉むんか!?



何処の国の挨拶だよそれ!!!



あたしは頭が余計に痛くなって、呆れ顔でこめかみを強く押さえ込む。


順に記憶をたどっていくと、道端で倒れたあたしは、どうやら純平君に背負われてこのホテルにやってきたようだ。




「実はね、俺も彼女と別れたばっかりなんだ。4年間もずっと一緒にいたのになー…」

「え。なんで知ってんの?」

「なんでって…自分で言ってたじゃん」



へっ!?

全く記憶にない…。

恐るべし…アルコールパワー!!



「だから、今日は一緒にいよう?」



純平君は、どこか悲しみを秘めた痛々しい笑顔で、優しくあたしに手を差し伸べる。



その笑顔を見た瞬間、あたしの胸の奥がズキンと痛んだ。



取り繕う笑顔の辛さを知っていたから。

とても他人事とは思えなかったんだ…。


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