君色
血の気が引くというのはまさにこの事を言うのだろう。


自分の体温が著しく低下していくのを痛い程感じた。


「北…………斗………?」


こんな時間に
こんな所で
こんな状態を発見される事になるとは、一体誰が予想しただろうか。


あたしは何故か、全身を震わせながら混乱している頭で必死に言い訳を考えていた。


北斗は、特に驚いてる様子もなく、ただ無表情であたしの事を見つめている。


まるで全てを見透かしてしまいそうな、真っ直ぐな視線…。


やましい事なんて何もなかったけど

あたしは北斗の目を見るのが怖くなった。



「い…行こう、純平君」

「え、あ…うん」


北斗の目の前を他人のフリして横切る。




「…樹里ちゃん…?」

心が…
引き裂かれそうに痛かった…

「…なんでもないから」

「でも、涙が……」


ねぇ、今のあたしの心と
北斗の心、どっちの方が痛いかな…?


振り返る事はしない。

後ろに感じた北斗の視線が、焼けそうなくらいに熱くても…

前に進むって決めたんだから。

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