君色
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星一つ見えない曇った空の上にぼんやり浮かぶ丸い月。



心なしか少し赤みがかって見える。



ベランダと隣接した寝室の出窓に腰をかけ、俺は何時間もその月を見つめていた。



「―――っくしゅっ」

寒くなってきた。



俺は窓を閉めて、眠れもしないセミダブルの黒いベッドにパタッと横たわる。



瞳の奥に、先程の情景がフラッシュバックし、頭の中をエンドレスで流れ始めた。

まるで映画のスクリーンに映し出されたみたいに、それは鮮明に写し出されている。





やがて、俺の中の血がざわざわと音を立てるように騒ぎ出した。





「ああああぁぁぁぁぁ――――ッッ!!!!!」



まただ。


俺はどうやら、自分の感情を自分でコントロール出来なくなると、こうして寄声を発しては

身の回りの物を破壊し始める癖があるようだ。


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