君色
「市川、ちょっといいか?」
トイレにでも行っていたのか、席を外していた中野が病室に戻って来るなり、あたしを呼び出す。
先ほどの待合室に戻り、あたしたちは茶色い長イスにちょこんと腰掛けた。
まだ、時間が早いからか、待合室は子供から大人、或いはお年寄りまで様々な人で賑わっている。
「…北斗、大丈夫なの?」
「まぁ、一応はね。別にどこか悪いわけじゃないから、2~3日で退院は出来るらしいんだけど…」
「何処か悪いわけじゃないのに何で倒れるのよっ?もっとちゃんと診てもらってよ!
後から実はガンでしたなんて事になったらシャレにならないんだからっ!!」
「落ち着け!今からそれを話そうとしてんだろ?」
「…………」
あたしは力んだ拳から力を抜いて、そっと膝の上に戻した。
「ストレス性の呼吸障害だってさ」
「ストレス性…呼吸…障害…?」
「要は、強いストレスで呼吸困難になったり、過呼吸になったり、
正常に呼吸が出来なくなっちゃう事を言うんだよ」
そんな事が…あるんだ。