君色
「あいつ、片桐と市川の間で板ばさみになって、とうとうパンクしちまったんだろうな」

「な、なんで!?だって、北斗はあたしの事好きになれなかったんじゃないの!?まどかの事が忘れられなくて…だからあの時…」



“ごめん…樹里…ごめん…っ”



確かに北斗は泣きながらそう言った。




あの時、まどかの事が忘れられないから、お前の事はそういう風に見れないって…

あたしはずっと、そう言われたんだと思ってた。



「その逆だよ。あいつは、本気でお前に惹かれてたんだ…。
だから、自分の中の罪悪感がそれを邪魔したんじゃないかな」

「…………」

「言おうかどうか、迷ったんだけど…あいつ、毎晩片桐の幻覚にうなされてたみたいなんだ。
“円が俺を連れて行こうとしてる”って最近そんな事ばっかり言っててさ。
俺が知る限り、片桐はそんな奴じゃねぇって言い聞かせてたんだけど…やっぱりダメで」



幻覚?


うなされてた…?


聞きなれない言葉達が、ふわふわとあたしの頭の中を舞う。

< 249 / 270 >

この作品をシェア

pagetop