君色
「!」

そう思ったら、あたしは無意識に北斗の腕を掴んで、強引に表に連れ出していた。


「な、なんだよ…」


マンションのゲート前であたし達は足を止め、向かい合う。




「行こう!!」

「は!?どこに?」


あたしは、再び彼の手を引いて駅まで走った。




「なぁ、マジで何処行くの?」



あたしの後ろで不思議そうに顔を傾けている北斗。


そんな彼に、あたしはにっこりと笑いかけ、

「ついてくれば分かるよ」

と答えになってない返答を返した。




過ぎてしまった過去は取り戻せないかもしれない。


でもさ、塗り替えることは出来るんじゃないかな?


真実を受け止める事は、凄く勇気がいる事で

なかなか踏み出せなかったりするのかもしれないけど


ほんの少しでも

前へ進む事が出来たら

案外、たいした事じゃなかったりするんだと思うんだ。



ここから、始めようよ。

ゼロにはならなくても、そこから歩き出すことはいくらだって出来るんだから。

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