君色
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俺は、樹里に手を引かれるがままに、ある場所へ運ばれていた。



本当にこいつは、俺が想像も出来ないような突拍子もない事を思いつきやがる。


そこは…

どうしても俺が足を踏み入れられなかった、“あの場所”に違いなかった。


瓦坂の駅を隔てて北側は、円がいなくなってからこの目にその姿を映した事は一度も無い。



俺の足がぴたりと止まる。

でも、そんな事はお構いなしに、こいつは強引に手を引いて、無理やりその場所へ俺を連行した。



変わってないな…。


あの時のままの

広い交差点。


交通量も激しく、乗用車から大型トラックまで、様々な車が右から左からせわしなく行き交う。




でも、少し広めのこの歩道は…



何処か静かで、悲しそうだ。


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