君色
「ねぇ、さっき手を併せた時、まどかになんて言ったの?」

「…あ―――…」


俺は間をあけて

頭をがしがしと掻き乱しながら


「お前の事…紹介したんだよ。今の俺の彼女だって…」

と小声で呟いた。


「え……?」

「…頭悪そうだけどいい子そうだってさ」

「それって…」

「…何か不満?」


樹里は泣きそうな顔で首を思いきり横に振りながら、駅前だと言うことも忘れて俺に抱きついて来た。


「北斗~~~~~~っ!!!!」

「どっちが泣き虫だか」

「うっ…うるさいっ…!だっで…っ…だっで凄い嬉しいんだも゛~~!!」

「わかったわかった」



不細工な顔でなきじゃくる樹里の頭を

仕方がないから優しく撫でてやった。


これでもこいつには

言葉ではいいあらわせない位感謝している。


もう、大丈夫。

自分を見失ったりしない。


悲しい思いもさせないよ。


遠回りした分まで大切にするから




「樹里…好きだよ」




駅前の噴水の水面には

ゆらゆらとゆれながら

唇を重ね合う二人の姿が鮮やかにうつしだされていた。

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