君色
「おっそーい!5分遅刻っ」
「……うっせ」
そんくらい多目に見ろよ。
大抵の約束は破るこの俺様が来てやったんだから。
「で?何処行くわけ?」
「じゃーん♪」
市川が脳天気に取り出した二枚の紙は、どうやら何かの割引チケットのようだった。
「隣町のショッピングモールのカフェの割引券♪」
「隣町って…」
「そ♪瓦坂」
「さいならっ」
焦って引きかえそうとする俺の腕を市川がガッチリと掴む。
「ほら行くよっ」
ぐいぐいと駅の中に連れ込まれ、有無を言わさず電車の中に詰め込まれた。
「あんた瓦坂から引っ越して来たんでしょ?何でそんな嫌がるかな〜」
いかにも俺は瓦坂出身の瓦坂育ちだ。
別に嫌いじゃないさ。
巨大都市で何でもあるあの町は、とても便利で遊ぶ所も沢山ある。
ただ…。