君色


「市川」

「なに?」

「…恋人ごっこはもうおしまいだ」

「え…っ?」

「悪い。俺、帰るわ」

「ちょっ…待ってよ!」



市川の呼び止める声を無視して、駅を目指した。


ここには…

思い出がありすぎる。



“最後にここへ来た日は確か雨が降っていて

初めてあいつと結ばれた日でもあった。


追いかけても
追いかけても
届かなかったあいつに


初めて追いつく事が出来たんだ――…”
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