君色


「う…」

それから一時間ほどした頃だろうか、北斗は意識を取り戻したようだ。


「気が付いた…?」

虚ろな目があたしを捕える。


「まど…か…?」

「え?」

「まどかっ」


北斗にはあたしの姿が見えていないのか、うわ言のようにその名前を呼びながらあたしを引き寄せ、強く抱き締めた。


「もう…何処にもいくなよ…」


まどかって…
彼女の名前…?


「頼むから…俺を置いてくなっ…」


見えなくてもわかった。

北斗が泣いていた事。


だって…声が震えてたんだもん。



こっちまで悲しくなるくらい

頼りなくて、脅えたような声だったんだもん―…。



この腕は、あたしを抱き締めてるんじゃない…。



ねぇ、気付いてよ。

あたしはまどかなんかじゃないよ…?



いつの間にか、あたしも北斗を強く抱き締めていた。



どうしてだろう?
胸が痛い…。
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