君色
「市川」
ドキッ。
あたしを呼んだその声が誰のものか、姿を見なくてもわかった。
日向とそんな話をしていたからなのか、名前を呼ばれただけであたしの胸は高鳴る。
日向が変な事言うから意識しちゃってるじゃん!
あたしは精一杯のポーカーフェイスを装って後ろを振り向いた。
「北斗。おはよ」
「おぅ。昨日…俺んちに見舞いに来てくれたんだって?」
自覚なしかい!?
そりゃそうか…
あたしの事まどかと勘違いしてたくらいだもんね。
「元気になってよかった」
「ありがとな」
北斗は一言お礼を言うと、この前の事には触れずにそのまま自分の席についてしまった。
え!それだけ!?
他にもっと言う事あるでしょーよ!?
“恋人ごっこは終りだ―…”
いきなりあんな事言われても訳わかんないし!
それとも何?
あたしの意思は関係ないって?
なんか…凄いムカツクんですけど!!