君色
やっと痛みにも慣れてきた頃、
「ねぇ、何であんな強いの?」
俺は無意識に素朴な疑問を片桐にぶつけていた。
「先生より格闘家とかのが向いてるんじゃねぇ?」
「あぁ、ウチの親父は格闘家だよ」
――マジで??
「その影響で、あたしも一時期はそんなの目指してたりしてたんだけどな」
やっぱり目指してたんかい。
「何で断念しちゃったの?」
「………恋をしたからかな」
「はぁ!?そんなんで辞めちゃったの?」
「あたしも若かったんだよ。可愛くなりたくて仕方なかった時期があったって事だ」
「ふーん…意外」
そんなの全く興味なさそうなのに。
今の片桐の姿からは、恋をしていた時期があったなんて微塵も感じられない。
でもそうだよな。
25年間恋をしたことが無いなんて、本当にあったら逆に怖いよな。
何でそんな事を考えたのかわからないが…
俺は、女らしい片桐を見てみたいと思った。