君色
第二話
鬼ごっこ
「樹里ーー!次教室移動だってーー」
「うーーん!今いくー!」
日向に言われて、あたしは急いで科学の授業セットを用意した。
飲みかけの缶ジュースも一緒に持っていこう。
どうせ、科学の沼田はなにしたって怒らないんだから。
気が弱くて生徒にはナメられっぱなし。
そういう先生ってどの学校にも必ずいるよね。
ま、左薬指に指輪はめてるし、結婚できただけスゴイと思うけど
どーせ尻に敷かれてるんだろう。
弁当はいつもオリジンだしね。
だからうちらは、沼田の事を密かにオリジンって呼んでいる。
まぁそんな事はどうでもいいか。
実験室に向かう途中、窓の向こうに中庭で寝転ぶ須往の姿を発見した。