君色
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「おい、何でジャージじゃダメなんだよ」


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久しぶりに会ったってのに、何でそんな色気の無い会話から始めるかな。



そう、今日は大晦日。

これから二人で初詣に出かける所だ。



「いいじゃん、そのワンピ似合ってるよ」

「そういう問題じゃない」


そういう問題だよ!

あんたがウチの学校に来てからその姿しか見た事ねぇっつーの。



「だって、先生せっかく綺麗なのに勿体無いよ」

「は!?お前熱でもあんのか!?」


本当にジャージしか持ってないって言うから、
今日この日のためにわざわざ俺が、ワンピースをしたててやった。


ちょっとだけ胸元が広く開いた、黒色のロングのワンピ。


細くて白い先生の体にはとてもよく映える形だ。



今日は髪の毛を結ぶのも禁止。

メガネも禁止。

という俺のワガママを、すんなりとは言わないが、嫌な顔をしながらも片桐は聞いてくれた。



俺は、女を綺麗にする事にかけては天才じゃないかと思う。



ワンピの上に羽織ったコートがミスマッチだった事を差し引いても充分に、その美貌は生かされていたからだ。
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