君色


行く人行く人が必ずと言っていいほど、片桐を見て振り返る。


でも、ちょっとだけ悔しいから

コートの袖からスラッと伸びる片桐の手を、ギュッと握ってやったんだ。


「迷子にならないように」


こうして、手をつないで歩いたら

少しは恋人同士に見えるかな?



片桐の指先は冷たかった。
多分末端冷え性なんだろう。






神社に着くと、カップルやら子供連れやら、大勢のお客さんで賑わっていた。


たまたま、片桐の家から一番近い神社が縁結びで有名な神社だったのだ。


夜11時を過ぎているというのに、活気は増え続ける一方だ。
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