君色


俺は時々、こいつの好奇心はちょっと度が過ぎるんじゃないかと思う時がある。


聞けば、ある意味俺並にコイツの生い立ちは凄まじいものだった。

かいつまんで言えば、とにかく習い事にとりつかれたような生活と言うか

両親が将来の為にと思ってやたらと色んな事を習わせていたらしい。


その影響なのか、そのうちに自分のやりたい事がハッキリせず、興味を持ったものは手当たり次第に手を出してみるようになってしまったと言う。



視野が広がりすぎるのは考えものだな。



「で、今度は何やりたいの?」

「出版社で働いてみたい。あたし本が大好きだからさ」


知ってるよ。

この部屋から見える範囲でも相当の数の本が並んでいる。


流行りものからマニアックなものまで揃っていて、本屋が開けるんじゃないかと思うくらいだ。
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