LOVE・LOVE・LOVE
何で、そんなに格好良いのよ。
高い身長と小さな顔。
整った顔立ちに長い腕。
こんな人が、私のこと好きになってくれるはずないのに。
「時間通りじゃん。」
「当たり前です。」
先生はコートのポケットから
小さな銀色の鍵を取り出す。
それは車の鍵のようで。
指でクルクル回しながら私を見てニヤリと笑った。
「ドライブでもどうっすか?」
「…良いね。」
きっと先生はスリルを求めてる。
ただ、それだけ。
私は無理やり笑顔を作り頷いた。
それでも、先生と一緒に入れるなら近くに入れるなら。
先生の車に乗り込み、シートベルトを締める。もちろん、助手席なんかじゃなくて後部座席。自分から助手席に乗る勇気なんてないもの。
初めて乗る先生の車。
「じゃ、行くぞ。」
「…はーい。」
真っ黒な格好良い車。
そんな車に似合わないピンクのテディベアー。
私の隣にちょこんと座る。
嫌な予感がした。
格好良いものが好きな先生が、ピンクのクマだなんて。
「…先生、何処行くの?」
「んー、決めてねぇけど?」
「はぁ?!」
私は大きく不満の声を上げる。
行く場所なんて私達にはない。
一緒に外を歩くことなんて出来ないし、ご飯を食べる事だってもちろん出来ない。
そんなこと分かりきっていたけれど。
一体私は何処に連れて行かれるのだろう。
運転する先生の姿が格好良くて
私は無意識に窓の外へと顔を向ける。
…暗くてよかった。
赤くなる頬を隠せて。
「沙紀、もっと笑えよ」
「はい?」
「笑ってたほうが可愛いぜ?」
…この天然やろう。