日暮れの緋色
 「目の前で、泣いてるみたいに笑って・・・消えちゃったんだよ!」



 比呂は涙が止まらなかった。



 けれど、それをぬぐうことなく、目の前の少女に訴え続ける。



 「・・・あなたの大切なものは何?」



 「え?」



 「おい!受けるのか?」



 男の言葉を無視して、少女はもう一度比呂に問うた。



 「あなたの大切なものは何?」



 「僕の大切なもの・・・」



 一番大切なものはお父さんとお母さん、あとお姉ちゃんだ。



 だけど彼らは「モノ」じゃない。


 
 じゃあ、僕にとって大切なものは何だろう。
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