恋のどれい
「信じてなかったのかよ」
だって、そりゃあ。
「自分のも作ったんだ」
べつにいいけど。
「お前の冷蔵庫入ってんの少ねぇな。俺の頭脳をフル活動させたよ」
あたし、あまり食べるひとじゃないし。
「てゆか、ここに1人暮らし?親は」
あたしの体がびくっと震える。
意識していないのにまつげが下がる。
もうだいじょうぶなのに。
「昔ね、亡くなって。でもだいじょうぶだし」
「……だいじょうぶじゃねぇだろ。昔だってなんだって」
前川くんは、ひとの心を解きほぐすのがとくい。
だからあんなにもひとをトリコにするのがうまい。
あたしは、トリコになんてならないけど。