恋のどれい
前川くんに…ほんものの恋なんかわからせることはできないよ。
「はなして…っ!ほんとうに、なんでもないから」
なんでもない。
あたしたちには。
あたしとあなたになんにもない。
あなたは王子さま。
あたしは、ただの農民なんだから。
「は…」
「なんでもない。えと、ばいばい…っ」
今までこうやって生きてきた。
こんなことで弱るようなあたしじゃない。
こんなとこで足ぶみなんかしちゃいられないの。