恋のどれい


「へ…」



このひとはさらに泣いた。



あたしは目をぱちぱちさせる。




「だいぶ前になくなったんです。あなたと王子が付き合った宣言があって、そのあとすぐに」




涙ながらに語る。



あたしはその言葉をゆっくり頭の中で噛み砕く。





「あなたと出会ってそれっきりです。あの保健室のでさいごでした」




「でもあたし、つい最近保健室で…」


「あれは…」



嗚咽がもれて、このひとは苦しそう。




「解散だって、伝えただけなんです」







恋のどれい制度は、もうないの…。




「そうなの…」


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