恋のどれい
緊急の手術が終わって、前川くんは病室のベッドの上。
医者によると、目を覚まさないとやばいらしい。
ってことは理解できた。
あたしはさっきから、前川くんの冷たい手を握りしめる。
前川くんの心拍数だけを示す音だけの空間の中、あたしは泣いてしまう。
こんなことになるんなら、伝えとけばよかった。
くだらない見栄なんて張るんじゃなかった。
恋のどれいなんて関係なしに、気持ち伝えとけばよかった。
あたし、意地っ張りに生まれてくるんじゃなかった。
好きなひとをこんなふうにさせるなら、生まれてくるんじゃなかった。