恋のどれい
だって、とあたしは顔を上げる。
「ぷっ」
あたしの顔は泣いて、鼻水で、もう大変。
そのあたしの顔に前川くんが笑った。
前川くんが笑っててくれるなら、あたしはどんな顔でも。
あたしはどうなってもいいよ。
前川くんがあたしの顔を拭いてくれる。
涙も鼻水も。
止めなきゃって、思ったけど、そんなことよりも。
前川くんの顔が近づいてくる。
冷たい唇があたしの唇に当たる。
倒れてそのはずみで?
そう思ったけど、違う。
ちゃんとしたキス。
あたしの初めての、前川くんと初めてのキス。