恋のどれい
たったそれだけなのに
恋人どおしではふつうにやれることなのに。
それだけであたしは熱を帯びるの…。
「…家そんなに知りたいの?」
ちゃんと力が入らなくて、あたしはうなずくことしかできない。
あたしの体を後ろから支えて、動き出す。
「教えるだけだぞ。中には入らせないし…」
「うん。それだけでもいい」
知りたいの。
前川くんのこと。
いっきに知りたいとかは言わないから。
ゆっくり、ゆっくり…知っていきたいの。
「……引くなよ」
「へ」
ついたのは、ぼろ家。