恋のどれい


ええと…。


この言葉があの前川くんの言葉だと信じられずに、ぽかーんと前川くんを見つめた。




「え。いや、う、え」


「なに言ってるの…」



しどろもどろになった前川くんがおかしかった。


それ以上に、あの言葉がらしくなくておもしろかった。



でも恥ずかしいセリフ。

顔が赤くなるのを隠せない。




「ヘンなこと言った。忘れろ」


「むりだよ。そんなこと」



前川くんが頭をかく手をつかんで、あたしの手でおおった。


ごつごつした手がやっぱり男の子なんだと実感させる。




「…うれしい、よ?忘れられないよ」


「それはどうも」



あたしはごつごつした手で遊びながら。




「やっぱりさ…」


言いたいことは、さっきと同じ。

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