Memories - 年の差恋愛 -
自分の鞄と手土産を抱えて入ってきた私を見て、後ろの方を覗き込むようにしているお母さんは飛田さんが来ないことが不思議なようで。

「お父さんと車洗ってるよ。なんで今日に限って洗車?」

手土産をリビングに置いてから手を洗って戻ってくると、くすくす笑いながら窓からガレージを見ているお母さんが居て。

「お父さんね、緊張してそわそわしてて。見ているこっちが疲れちゃうから、洗車でもしてきてちょうだいってお願いしたのよ」

くすくす笑いながら再び料理を始めたお母さんの横に、私も並んで手伝いを始めた。

「あらあら。いい傾向ね」

普段、言われないとなかなか手伝わない私だけど、これからは沢山お母さんの料理を覚えなきゃ。

料理教室へ通うよりも、手軽だけど絶対に上達すると思うし。

「…これでも、女の子ですからね。お母さん、たくさん教えてね」

早く帰宅できた日は、こうしてお母さんと一緒にキッチンに立とう。

毎日食べて来たおいしいご飯を、私も飛田さんに作ってあげたいから。

「佐智子もやっと大人になったわね」

意味がわからなくてお母さんの顔を見ると、慌てて目頭を拭いていた。

泣いていたの?お母さん?

「さあ、いつまで車洗っているのかしらね?二人を呼んできてくれる?」

出来上がった料理をお皿に盛りつけているお母さんに言われて、表へ出るとワックスまで掛けられてピカピカに磨き上がった車の前に座り込んでいるお父さんと飛田さん。

なんだか本当の親子のようにすごく親しげで、二人とも楽しそう。
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