僕の女王様
「女王様も形無しだね」


たぶん僕だから見せてくれる顔。


揺らさないようにそっと隣に移動する。


「……」


不安そうな上目使いには、いつもの威厳はなく、理性を駆り立てる。


震える手を握ると、驚きながらも握り返してくれる。


頂上でキスをしたカップルは結婚できる。


そんなどの遊園地にもありそうな言い伝えが、この観覧車にあった事を僕はまだ知らなかった。


柔らかい感触と彼女の体温。


ファーストキスに味がないことを知る。


目を開けた千里に怒った様子がないことに安心する。


「どうして…?」
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