僕の女王様
「どうしてあの場で断らなかったんだ?」


「あなたと一緒であまりの衝撃に言葉を失っただけ」


祐也に尋ねられればすねたように口を開く。


公衆の面前で振るのもかわいそうだと思った。


「海斗来なかったな」


「そうね」


思いの他、見舞い相手の容体は悪いらしい。


「綾香、帰ろ」


こいつの存在を忘れていた。


腹立たしい反面、深刻な雰囲気を吹き飛ばしてくれたことには感謝できた。


「早いのね。もう終わったの?」


そんなはずはないということはわかっていた。


でも、怒る気力も怒る価値もない。
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