うらら!
1
訳も分からないまま山田ひかるは佐伯みずほの手を引いて走っていた。
歌舞伎町の裏通り。
国籍の違う様々な人種がさ迷う変な場所。
あからさまに違法そうな店、薄汚い居酒屋、よく分からないけれどくたびれてる人間。
走りながら視界の脇を通りすぎて行く景色に日常離れした異様さを感じて背中に冷や汗を掻いた。
本当に大丈夫かよ。
山田ひかるは止まることの知らない足元を見て不安になった。
生理2日目だった。
下腹部に感じる鈍く重い痛みを時々思い出した様に感じて、冷や汗と共にじっとりとした脂汗を額に掻いた。
あぁ変なドラマ見ているみたいだ。
夏は終わったばかりだった。
今朝、リビングのテレビでやっていた天気予報で季節の変わり目を知った。
じっとりとした空気が変わろうとしているはずなのに、ここの空気は湿っている。
兄貴もお母さんもおばあちゃんのいる石垣島に昨日から一週間行っていて、私一人だけが家に残って受験勉強をする予定だった。
なのに。
なのに、みずほがやられた。
携帯が鳴る前から、既に今日の始まりと共に嫌な予感はしていたんだ。
嫌な予感てものは腹立だしいほど的中するもので、
携帯の受話器の向こうからみずほの助けを求める叫び声が聞こえた。
やられたって叫んで泣いていた。
多分相手はこの前逃げたお相手だろう。
自分とは全く関係ないはずなのに何故だか心臓が高なり、今のご時世で援助交際なんかをしているみずほを止めない自分を責めた。
新宿までは自転車で行った。
都心に住んでいて良かったなんて一度も思ったことはなかったし、これからも無いだろうと思う。
みずほは呼び出した場所から少し離れたビルとビルの間に居た。
紺色の私立の制服がビルの影で真っ黒に見えた。
私に気付くとへなへなと座りこんでしまった。
「みずほ。大丈夫?どこか血出てない?」
「どうしよう!どうしよう、どうしようどうしよう!」
彼女の髪は逆撫でされたようになっていて、ところどころが縮れていた。鼻血は出ていなかったけれど不自然に血の跡が顔のあちこちについていた。
歌舞伎町の裏通り。
国籍の違う様々な人種がさ迷う変な場所。
あからさまに違法そうな店、薄汚い居酒屋、よく分からないけれどくたびれてる人間。
走りながら視界の脇を通りすぎて行く景色に日常離れした異様さを感じて背中に冷や汗を掻いた。
本当に大丈夫かよ。
山田ひかるは止まることの知らない足元を見て不安になった。
生理2日目だった。
下腹部に感じる鈍く重い痛みを時々思い出した様に感じて、冷や汗と共にじっとりとした脂汗を額に掻いた。
あぁ変なドラマ見ているみたいだ。
夏は終わったばかりだった。
今朝、リビングのテレビでやっていた天気予報で季節の変わり目を知った。
じっとりとした空気が変わろうとしているはずなのに、ここの空気は湿っている。
兄貴もお母さんもおばあちゃんのいる石垣島に昨日から一週間行っていて、私一人だけが家に残って受験勉強をする予定だった。
なのに。
なのに、みずほがやられた。
携帯が鳴る前から、既に今日の始まりと共に嫌な予感はしていたんだ。
嫌な予感てものは腹立だしいほど的中するもので、
携帯の受話器の向こうからみずほの助けを求める叫び声が聞こえた。
やられたって叫んで泣いていた。
多分相手はこの前逃げたお相手だろう。
自分とは全く関係ないはずなのに何故だか心臓が高なり、今のご時世で援助交際なんかをしているみずほを止めない自分を責めた。
新宿までは自転車で行った。
都心に住んでいて良かったなんて一度も思ったことはなかったし、これからも無いだろうと思う。
みずほは呼び出した場所から少し離れたビルとビルの間に居た。
紺色の私立の制服がビルの影で真っ黒に見えた。
私に気付くとへなへなと座りこんでしまった。
「みずほ。大丈夫?どこか血出てない?」
「どうしよう!どうしよう、どうしようどうしよう!」
彼女の髪は逆撫でされたようになっていて、ところどころが縮れていた。鼻血は出ていなかったけれど不自然に血の跡が顔のあちこちについていた。