うらら!
家まではあと15分もあれば着くだろう。


学生ローンとかかれたビルの脇においてきた自転車が心配になった。

みずほが出てきたビルから然程離れてもいないからもしあれを見つけてしまってからあの自転車を発見されて調べられたりしたら、我が家に警察は来るのだろうか。

あの街に住みついている人間達が関係していたりなんかしたらそいつらまで来るのだろうか。



走っているせいではない明らかに早くなる耳にまで聞こえそうな動悸が変な汗をさそって全身が冷たさに包まれた。


ああしまった。もう後戻りを出来ないものを背負いこんでしまった。後悔と不安ばかりがこの先つきまとうのだろうか。

再来年には大学受験なんてものを控えてただ毎日ダラダラと勉強してきたつい昨日までが恨めしい。



「ひかる!」


みずほのかすれた悲鳴にも似た声が私の思考と足を止めた。

全身で息を吸って吐いて、私は小さく震えて振り向いた。

みずほは持久走の息切れを忘れてしまったのだろうか。
彼女は青ざめた顔で只つい先ほどの悪夢を抱えてそのことで立ち止まってしまっている。


既にそこは新宿を抜けられていた。
何度か人目についただろうが脇道ばかりを選んで通った為、周りは常に暗くて寒かった。
腕をさすった。七分袖は中途半端に寒い。




「どうしよう!」

やっとしっかりと彼女の全体を見れた。

セーターの腹の部分だけかと思ったら下のブラウスまで裂けて隙間から覗く白い腹から小さな擦り傷のような傷が見えてうっすらと血が出ていた。
濃紺のセーターの袖は血のせいで黒く染まってしまっている。
タイツの内股の部分は裂かれて履かない方がいいような無惨な姿になっていた。
顔のあちこちについた血は乾いて染みのようになっていた。


「あの人、まだ生きてた!多分やりにくる!また絶対仕返しにくるよ!私荷物置いてきちゃって、学生手帳とか財布とか入ってた!やばいよ!何かの組の人間だとか言ってたし!どうしよう!私しんじゃう!」


へたりと地面に座り込む彼女の下着が見えて、その派手な下着に腹ただしさを覚えた。

そんな派手な下着着るから。

母親の言葉を思い出した。

派手な下着着ると気持ちまで浮かれてロクでもない男にひっかかるんだよ。あほんだら。
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