うらら!

「とにかく、家に帰ろう」

私は座りこむ彼女の腕をとって起こしてやった。


起こす彼女の体が軽くて、傷だらけの体を見て誰を恨めばいいのか分からなくなった。

今更叱るなんて可笑しいから、とにかく彼女の腕をとって先を急いだ。



ビルの時計が2時43分を差して、未だそんなに時間が経っていないことに驚いた。



マンションのエントランスに誰もいないのを見計らってみずほを中に入れた。


エレベーターの中でみずほがピアスを外した。無理をしたのか引っ張られたのか少しだけ血がピアスについていた。


「ひかる、学校楽しい?」
エレベーターの音より小さい声でみずほが訊いた。


「馬鹿な学校だから自由だし秋休みなんてものもあるから、それなりに退屈だよ」

そんなことどうだっていいよ。

私はそんなどうしようもない質問をしてくる彼女の気を疑った。



「どう…やっちゃったの?」


「…生きてるよ、多分、だけど」


「…」



14階についた。

このマンションは建ってまだ二年も満たない。
各階のエレベーターホールは淡いオレンジの蛍光灯がついている。
ほの暗い照明はみずほの汚れを目立たせず、彼女は幾分か落ち着きを取り戻した様子で正面の鏡を覗きこんだ。


「うわ…ひどい恰好。最悪」


「早く。うちは一番奥だから静かに歩いて」



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