プラム

待ち人

相変わらず鍵のかかっていない扉をあけると、見慣れた靴があった。




「おかえりー。」

大黒の声がする。




「来るなら来るって連絡くれればいいのに。」

思わず言ったけど、本当はもう慣れている。




だって、連絡をくれるような人だったら鍵を開け放す必要はない。



大黒はソファーに寝転がっていた。

「疲れてるの?」

「うん、ちょっと……朝から会議で忙しかったからね。」

「じゃ、家で寝てればよかったのに。」




本当は彼が来るのを待ってたはずなのに、そんな言葉しか出てこない。

「素直じゃないねぇ、梨香は。」

ニヤニヤしながら体を起こした大黒と目が合った。
なんだか悔しくて目を逸らし、シャーベットを開ける。




オレンジの、甘酸っぱい香りがした。
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