プラム
車の中で、彼はあたしの手を握ったままだった。

「梨香ちゃんの手はいつも冷たくて気持ちいいな。」

小林さんが言った。




「小林さんの手があったかいんだよ。だからあたしも気持ちいいし。」

「そういえば、手が冷たい人は心が暖かいって誰か言ってたな。梨香ちゃんもそうだよね。」




びっくりした。

そんなこと言われるなんて思ってなかったから。



「でもあたし、別に優しくないよ?こんな仕事してるぐらいだし。」

何だか慌ててそう言うと、小林さんは少し笑ってこっちを見た。

「仕事は関係ないよ。実際僕は梨香ちゃんのことを優しい子だと思ってる。」


「……ありがと。」



なんだか恥かしくて窓の外に目をやった。



流れる景色は鮮やかで、これがデートのような錯覚さえ覚えてしまう。
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