魔神戦記!
「狼牙………
この子、誰なの?」
蜂姫と初めて会った時にも同じ質問をされたな。
「この子は……」
「私は……那由(なゆ)。
貴女がさゆりさんね?
狼牙から聞いてるわ」
俺に代わってラシスが答えた。
人間体の時は那由と名乗るようだ。
「さゆりさん。
私達には今、お喋りしてる時間は無いの。
悪いけど後で説明するわ」
那由の強気だが淡々とした態度に、さゆりは黙ってしまった。
「狼牙、早く行きましょ」
「あ、ああ…」
後ろ髪を引かれる思いで、俺はさゆりをその場に残して走り去った。
これで良かったのだろうか…?
だが、今は!
「………神化!!」
銀の魔神と黒の妖神が、曇天へ向かって飛び立った。
……………
「………?
来るか、ウノサス」
彼方より飛来する俺達の気配に、リ・シュウが感づいた。
「ならば貴様の力……
全力で見極めねばならんな!」
リ・シュウは虚空に手を伸ばし、何も無い場所から一本の旗を取り出す。
竿は青く、旗の部分は燃えるように赤い。
リ・シュウは旗をブォンブォンブォンと、風を斬る音を立ててバトンのように振り回した。
ジャキイィィィィィンッ!
回転が止まった時、旗は中国の戦国時代などで使われていた武器・円月青龍刀の形に変化していた!
「では………参る!!」
取り囲む自衛官達を尻目に、背中から生える水鳥の足の水掻きのような翼を広げると、リ・シュウは俺達来る方向に向かって飛び上がった!