追いかけてマイダーリン
Run、ラン、乱
はっと気付いた時には、僕はもうすっかり身仕度を済ませて、自宅のマンションの入り口に立っていた。

「鬼ごっこしよっか」

彼女が突然そう言い出したのは、ほんの数分前。
急かされるままに服を着て今に至る。

‐ところで彼女は何処に?‐

きょろきょろと彼女の姿を捜して、僕はがっくり肩を落とした。

‐やはり、夢だったか…‐

へたり込もうとした僕の後頭部に、カーンっという真夏の甲子園を想わせる響きと共に、何とも言えない衝撃が走った。
半泣きで振り返った僕の目が、もはや白昼夢かと諦めかけていた彼女の姿を捉えた。

「おーにさーんこちら、手の鳴るほーうへ」

少女のようなあどけない笑顔を浮かべて、彼女が手を鳴らす。
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