私は海に恋をする

怖い人

私は上機嫌で服屋から出る。
今日は欲しかったワンピースを買えて大満足な買い物だった。
「信悟なにしてんだよ?早く探せよ。」
春風のなか男の子の声が響く。
ふりかえるとバカデカい子が私のすぐ後ろに立っている。
その男の子の顔は…凄かった。
とりあえず凄かった。
眉毛は薄っくて、激細でほとんどない。
耳はピアスでギラギラに光っている。
極めつけは髪の毛。
なんと金髪。しかも、くすんだ感じではあるけど、しっかりパッキン。
ぶっちゃけ…怖い。
男の子が私の方をみて目が合った。
その子はニコリと笑いまた声を張り上げる。
「信悟!いいもの見つけた!!!」
そう言うと私の腕を掴んで「ちょっと待ってね?」と言う。
私はもう怖くて死にそう。
その男の子は嬉しそう。
正反対の2人に信悟と思われる男の子が近づいて来る。
「いいものって?」
眉をひそめながら聞く信悟は男の子と同じく…怖い。
信悟の方が眉毛はあるものの細いし、同じく耳はギラギラだし、ただ髪はチョコレート色でまだましだった。
「こぉれ♪」
私?!?!
男の子は私をもの扱いしながら信悟の前に押し出す。
「は?」
ですよねぇ…!!
この男の子絶対頭おかしい!!
「お前…」
信悟が驚いた顔で男の子の方をみる。
「でかしたぞ!直希!」
「だろー?」
はいー!?
私?!私なの?!私なんかした?!?!怖くて逃げたいのに直希はまだ私の腕をガッシリ掴んでいて離れることはおろか動くこともできない。
「直希、俺のことよく分かってんじゃん!!超タイプ~♪」
なぁんて?タイプ?
いやいや、あんた私の中じゃ外野もいいとこですけど!?
「だろ?何年ツレだと思ってんだよ!任せろって!…で?お前は?」
直希は上機嫌のまま信悟の肩をバシバシ叩いて質問する。
「いや、それがさ、なかなか可愛い子って居ないもんだね?」
「あ゛ぁ?」
急激に機嫌を悪くした直希が腕を掴む手に力を入れる。腕がへし折れそうなくらい痛い。でも怖くって、私はただ信悟が直希の機嫌をよくしてくれることを願うしかなかった。
「でもいいこと思いついたんだって!」
「…なんだよ?」
信悟が私の方をみる。それを真似て直希も私をみる。
「この子に友達呼んでもらえばいいんだよ!」
はいー!?無理だって!!
でも不機嫌な直希に「呼べんの?」って聞かれたら呼ぶしかなく…
「もちろんでぇす…」

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