~異種魔法異能力挌闘SFファンタジー~ 帝竜 -ミカドノリュウ- Ⅲ 竜と闇黒の王
 ぴたり、と天皇の竜の動きが止まった。
 突然の出来事に、麟紅ははてと首をかしげた。

「……慌てるでないネロよ。貴公が手を出さずとも我輩が……、…………!!」

 突然、天皇の竜の両眼(まなこ)がカッと開かれた。その頬を汗が流れ落ちた。

「……ざ、け……な……く……れが……ろ、す……」

 ちぎれちぎれに聞こえる声は、天皇の竜の声とは違う。現に言葉を発したと思われる天皇の竜でさえ、驚きの表情で自分の手を見ている。その手が震えながら持ち上がっていく。

「何を……しているのだ……ネロよ。貴公は、まさか……」

 遠くからでも天皇の竜の顔を流れる汗が見えた。
 暑いわけではない。冷や汗でもない。驚愕にあふれた汗だ。
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