【短編】雪うさぎ
あいつの妹が生まれた日は、例年にない大雪で、朝から振り出した雪は昼過ぎには吹雪きに変わっていた。

俺は小学校が出した緊急集団下校で、1時間目の授業もソコソコに学校から帰されることとなった。


「ただいま」


雪だるまのようになりながら帰るなり、傘やコートに積もった重い雪を落とす。


ふいに背後に気配を感じて振り返った。


「あ、おじさん」


手を引かれたうさぎが父親と一緒に立っていた。

俺を見るなり

「ゆうちゃん帰って来たんだ。」

と一瞬花が綻(ほころ)ぶ様に微笑んで胸がギュッと苦しくなる。


それが何だかとても不快で

「ああ」

と、ぶっきらぼうに言うと自分の部屋へと逃げ込んだ。


初めて俺の胸に芽生えた小さな想いが何だったのか

理解できなかった幼かった俺は


その感情を持て余し


うさぎを避ける事しかできなかった。




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