【短編】雪うさぎ
あの後、うさぎは俺の家に預けられた。


おばさんが産気付いたのだ。

こんな雪の日に、しかも天候はどんどん悪化していた。

夕方とはいえ、いつもならまだ明るい時間なのに、今日は照明をつけないといけないほどに暗くなっていた。


不安を感じていたのだろう。


いつも来ている俺の家なのに、初めて来た家のようにおとなしく居間の窓辺に座ってテレビを見ている。


いや

テレビを眺めていたんだ。

……瞳には何も映っていなかった。


何度も窓の水滴を拭っては、外を見つめる。

視線の先は隣の明かりの灯らない自宅だ。

そんなうさぎを見ていると益々胸が痛くなってくる。



俺に何かできる事は無いのか?


うさぎの笑顔が見たい…。


俺は居間のガラス戸の前で部屋へ入るのを躊躇して


どう声をかけるか考えながら


ぼんやりとうさぎを見つめていた。




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