【短編】雪うさぎ
突然、うさぎの大きな薄茶色の瞳から

真珠のような大粒の涙がぽろぽろと零れ落ちた。


「どうしたの?手冷たかった?」


少し赤くなった手を握り締めて俺は問い掛けた。


もしかして、迷惑だった?


「ううん、わかんないけど涙がでるの。」


俺はホッとして無意識にうさぎを抱きしめていた。

身長がほとんど変わらない俺のちょうど肩の辺りに、うさぎが顔を埋めて涙を流す。


腕の中のうさぎは心地よくて

髪を撫でると愛しさが込み上げてきた。



――誰にも触れさせたくない。



「うさぎ。約束して」

「うん?」

「約束して。俺の前以外では絶対に泣かないで」

「え?う・・・うん」

「絶対に、うさぎの事護るから。
だから泣かないで。泣くのは俺のそばだけにして」


俺の勢いに押されたのか戸惑いながらもうさぎは答えてくれた。


「うん。約束する。ゆうちゃんの前以外では泣かない。
そのかわり、ゆうちゃんも約束して。
泣きたい時は私のところに来て。絶対に一人で泣かないで」


一瞬ビックリしたが嬉しくて嬉しくて


多分俺は満面の笑顔だったんじゃないかと思う。


「うん――約束する」



絶対にうさぎを


その笑顔を護るよ



俺が心に誓いを刻んだ瞬間だった。



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