【短編】雪うさぎ
それはあの頃小さな手で作ったものよりもずっと大きくて…

いつだって心の支えだった物…

ふたつの寄り添う雪うさぎの意味するものは…


それは一日だって忘れられなかった笑顔

きっと帰ってくると約束してくれた人

でも…まさか…?


「ゆうちゃん…?」


声が震える。

ゆっくりと雪を踏みしめながらアプローチを歩く

ほんのわずかの距離が今日はなかなか進まない



足音が聞こえた


一歩、また一歩近づいてくる気配


私は怖くて顔を上げられず、足元に寄り添う雪うさぎを見つめていた



顔を上げて、もしも違っていたら?


顔を上げて、夢から覚めてしまったら?



心臓が早鐘のように鳴り、息が苦しい。


太陽を反射して眩しく光る雪景色が

最後の日の幻影をつれてくる

瞳に映るのは、あの日の眩しい雪景色

この雪うさぎは、あの日の私の記憶



コレは…夢だ



私夢を見ているんだ。





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