【短編】雪うさぎ
けれど

その日、父はなかなか帰って来なかった。

時間を追うごとに激しくなる吹雪で、父は帰宅することが出来なくなったのだ。

私は隣の家に一晩預けられる事になった。




いつも遊びに来ている家なのに、心細く感じたのは、普段訪れない時間帯だったからだろうか。

それとも父も母も隣の我が家に居ない不安からだったのだろうか。

私は猫のように窓辺に張り付いて、居間の窓の結露を何度も拭きながら視界を作り外を見続けていた。


「いつまでそんなトコに張り付いてんの?」


突然声をかけられ振り返ると、見慣れた少年が立っていた。

短く刈り上げられた漆黒の髪

意志の強い光を放つ切れ長の漆黒の瞳には少年らしい悪戯めいた表情が宿っている。

私とあまり変わらない身長を気にしている一つ年上の幼なじみだ。



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