【短編】雪うさぎ
ちゅっ…と、小さな音がして、彼の唇が離れる頃には、私は自分で立てないくらい力が抜けていた。

支えがないとその場に崩れ落ちそうな私を、勇気はずっと腕の中に閉じ込めて髪を弄り続けている。


「学校・・・行かなくちゃ」

私は小さな声で最後の抵抗をみせる

「行くの? だめ、行かせない」

「だって」

「もう3年生は授業もほとんど無いんだろう? 
今日だけは俺といてよ」


戸惑う私に勇気は追い討ちをかける


「それともうさぎは、寒い中ずっと待っていた数年ぶりに再会した恋人に、冷たく帰れって言うのか?」

「こっ…恋人って」

慌てる私に、悪魔のような綺麗な笑みで「違うの?」と聞くなんて、勇気ずるいよ。


そんな甘いマスクと声で言われたら



否定なんてできないでしょう?





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