【短編】雪うさぎ
「恋人って認めるまで何度でもキスするから」


勇気ってこんな性格だったっけ?


―― 唇の距離が少し縮まる


「嫌だっていっても離さない」


何だか、凄く強引じゃないですか?


―― 唇の距離が更に縮まる


「俺は10年間ずっと雅の事想って生きてきた。
忘れたことなんて無かった。
俺の心はあの日、この場所に置き去りにしたままだったんだ。」


あぁ

この人は、私と同じだったんだ。


視線が絡む…



痛いくらいに真剣な

勇気の気持ちが伝わってくる

勇気の瞳から視線を逸らさずに

私も精一杯の気持ちを視線に込める。



涙が一筋頬と伝ったのを感じた。

ゆっくりと言葉を紡ぎだす。

「勇気、私の心もあの日で時間を止めたままだった。
やっと歩き出せるのね」


あなたと一緒に―…


―― その言葉が発せられる事は無かった


愛している雅


―― そう言って



勇気が再び唇を塞いでしまったから




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