【短編】雪うさぎ
「わかんない。ずっと不思議だった。
どうして勇気が私をうさぎって呼んでいたのか。」

勇気は苦笑しながら

「やっぱり解ってなかったんだ」と

私の肩を抱き寄せ

耳元で囁いた。

―― うさぎってさ、構って貰えなくて、寂しいと死んじまうんだって。


「お前さ、昔から俺の後ばっかりくっついていただろ?

何でそんなに俺にくっついてばっかりいるのか、聞いたことがあるの覚えてないんだろ?

おまえ、あの時『だって、ゆうちゃんといないと寂しいんだもん』って言ったんだぜ?

俺さ、幼稚園でうさぎの世話を先生に頼まれた時、

うさぎは寂しいと死んでしまうから沢山可愛がってあげてね

って言われてたから、おまえも寂しがりだから、ほっとくと死ぬんじゃないかって不安になったんだぜ。

それからかな?おまえのこと『うさぎ』って呼ぶようになったの。」


初めて聞く事実に思わず目を丸くする。


だから…と、言葉を続けた。

耳に勇気の温かい息がかかって胸がドキンと跳ね上がった。


頬に体中の血液が上昇したかと思うほど顔が熱くなる。


真っ赤になった私を面白そうに更に強く抱きしめて彼は囁いた。


だから俺がずっと傍にいてかまってやる。


寂しくなんか無いよな?



もう『うさぎ』は卒業だ




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