【短編】雪うさぎ
それから2週間後

ゆうちゃんの家族は転勤で外国に旅立っていった。


「約束守るよ。きっと帰ってきてうさぎを護るね。
絶対に泣いちゃだめだよ。」


別れの時ゆうちゃんは泣かずに私の手を取ってそう言った。

私も泣きたい気持ちを押さえて

精一杯の笑顔で待っていると言った。



ゆうちゃんの乗った車が

ゆっくりと私から離れて

スピードをあげてゆく。


窓から身を乗り出して

私の瞳を追うゆうちゃんが

目を開いている事が痛いくらいの

銀世界の中に吸い込まれて

消えていくのを

私は見つめることしか出来なかった。


柔らかな冬の日差しが、降り積もったあの日の雪を溶かしている。


ふたりで作った雪うさぎも

今は形すら留めていないのが

悲しかった。



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